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Dr.高瀬の“がんばれ、若手諸君!”

開業医として臨床に駆け回る中、人脈を活かし医療活動を展開する高瀬義昌先生から若手医師へのメッセージ

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医者は休みの日と夜つくられる

連休中はみなさんどうお過ごしでしたか?

在宅医療にかかわっている私はかえって休みなく働くことになります。月二回の定時の往診もなかなか他の曜日に振り替えることが難しいし、連休中は道も空いていて移動が楽だということもあります。それにまして電話が多くなる一番の理由は他の医院がお休みだからということになります。

例えば家族も休みに自宅にいると普段あまり注意深くみていないのですが、休みの日は一日一緒にいるので知らずにお年寄りをよく観察することになります。『おばあちゃんの様子がどうも変だ!』と気づいて『先生、お休みのところ申し訳ありませんが往診お願いできませんか?』という問い合わせがあったりするのです。これが仲のいいケアマネージャからの紹介だったりするとなかなか断りづらく、つい明るく『ハーイ!時間をみて出動しまーす!』なんて軽い感じで往診の時間をやりくりすることになります。

しかし、こういう時こそ実は興味ぶかい症例があります。『医者は休みの日と夜つくられる』とはよく大先輩のドクターからよくいわれたことを思いだします。いってみると70代のおばあちゃま。やさしそうな息子さんが出迎えてくれました。おばあちゃまの症状は学生時代、柳澤信夫先生(元信州大学教授・現関東労災病院院長)からビデオをみせていただいた無意識な舞踏病のような運動を繰り返していました。みると左手の動きが顕著です。

患者さんは『息子がかってに先生を呼んだんだね!わたしゃ、医者はきらいなんだよ。まったく、こんなことになるなんて。私の日ごろの行いが悪かったのかね?こんなんじゃ近所にもかっこ悪くてオモテもあるけないよ。』とのこと。『医者がすきな人はあんまりいないからしょうがないよ。薬を使うとうまく症状が消えないまでも軽くなるかもしれないし、他に大変な病気が隠れていることもあるから病院を紹介するので入院して検査とお薬の調整をしてもらおうよ。短期間の入院だと思うけど。病院の先生にお電話してみるね!』

ご親子の間でやりとりされご家族は了承してくれました。早速近くの東京労災病院の神経内科の当直されていたドクターにお電話したところ快諾されました。こういう時にやさしく病院のドクターから『どうぞ、患者さんをこちらに送ってください。』といわれると正直ホッとします。この場をお借りして感謝!ありがとうございます!

約二週間たったところでご返事いただき「原因不明のヘミバリズム」とのことで一生のうち何例みられるかわからない貴重な症例だったというわけです。結果、ご本人もご家族も大喜びでした。『先生、すっかりよくなりました。これからまた様子を見にきてください。』とおばあちゃまがうれしそうに電話をかけてきてくれました。こういう病診連携はうれしくなってしまいますね!

というわけで超充実したゴールデンウィークでした!


その後は学会、学会。勉強会の準備と大忙しです。

第102回日本精神神経学会総会『ニーズの多様化と精神医学・医療の新たな展開』が、本年5月11日・12日・13日と福岡国際会議場にて開催されました。私も在宅医療に関わっていると、患者さんご本人か家族に精神疾患を疑わせる(大抵はごく軽いものですが)ことが往々にしてあります。したがって、東京医大霞ヶ浦病院精神神経科に週に1度勉強に行かせていただいています。というわけで、精神神経科学会デビューのため参加しました。

以前いた足立区のクリニックで子どもさんを診ていたところ、お母さんが自殺企図を繰り返すため、近くの精神科の病院を緊急でご紹介した経験があります。そのとき、お母さんがすっかり良くなってクリニックにこられました。

「電気ショックをやってもらったら、とても良くなったわ!」と、本人も家族も大喜び。1970年代のアカデミー賞受賞映画『カッコウの巣の上で』で見た電気けいれん療法は、大変悪いイメージだったので正直あまりのお母さんの症状の改善ぶりに私は大変驚きました。この症例の経験と、私が麻酔科の標榜医の資格を持っているので、この電気けいれん療法に興味を持ったことはある意味で必然だったとも言えるでしょう。

というわけで研修コース『電気けいれん療法の理論と実践』に参加しました。鮫島達夫先生(東大精神神経科・鮫島先生も8年間麻酔医として勉強されていたそうです!!)、中村満先生(都立豊島病院精神科)、日域広昭先生(広島市民病院精神科)に大変わかりやすく教えていただきました。昔は、精神科の先生が無麻酔でやっていた時代もあるようですが、今は全身麻酔下で施行されることが多くなっているようです。ここでも他の外科の麻酔と同じく麻酔科医不足が大問題になっています。東大精神科教授の加藤進昌先生も発言されていましたが、精神科医の麻酔科研修などを麻酔科の医局にお願いしたり、多くの麻酔科医に電気けいれん療法(ECT)の重要性を訴えたりする幅広いアピールが必要であるとのことでした。

引き続いてランチタイムプレナリーセッション1『滅びつつある人類の不安と精神医学〜精神療法の現代性・文化性の意味〜』西園昌久先生(心理社会的精神医学研究所)のご講演は、大変内容の濃いものでした。

40年前にはほとんど取り上げられることがなかった気分障害、特殊な神経症、子どもやリエゾン精神医学、更には地域、老年精神医学、物質―アルコール乱用の問題が今日では重大な問題になっている。と、H.Akisukal先生は述べているとのことです。

わが国の「平成17年障害者白書」によると、平成14年の在宅精神障害者総数約224万人は、3年前に比較して31%の増加。そのなかで気分障害、神経症性障害、そして退院促進政策の影響として考えられる統合失調症の増加が著しいとのことです。W.Rutz先生は『新しい病体としてうつ、攻撃性、自殺、自己破壊活動などの破壊的ライフスタイルの多発について、「社会的セロトニン症候群」と名づけて、劇的な社会変化による脳の発達、可塑性の悪影響の可能性がある』とのことです。これは、わが国に限らず世界の各国で同様の現象が見られているという視点も忘れてはいけない、と考えられます。

わが国においても地域医療の現場では、このような症例に対してどのようにアプローチするか、あるいは精神科外来にかかろうとしないしない引きこもり傾向の強い患者に対し、『どうアプローチしたらいいか?』は教科書がなく手探りで対応せざるを得ない中で、一番頭を悩ます問題です。この問題に対する解決策を論議する場所はまだなかなかないのが現状です。ご興味のある先生の書き込みをお待ちしたいと思います。

さらに私は研修コース『精神科薬物療法の基本〜精緻な臨床を目指して』 に参加しました。石郷岡純先生(東京女子医大神経精神科教授)、染矢俊幸先生(新潟大学精神医学分野教授)、寺尾岳先生(大分大学医学部脳・神経機能統御講座教授)、兼子直先生(弘前大学医学部神経精神医学講座教授)がそれぞれ分かりやすく解説してくださいました。

取りまとめ役の産業医大精神科教授中村純先生のお言葉にあるように、副作用が少ない向精神薬が出回るようになっている昨今、フルボキサミン《デプロメール・ルボックス》、パロキセチン《パキシル》、ミルナシプラン《トレドミン》などのSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、第二世代の抗精神病薬とされるリスペリドン《リスパダール》、オランザピン《ジプレキサ》、クエチアピン《セロクエル》、ペロスピロン《ルーラン》の特徴、投与量、投与方法、使い分け、副作用や在宅でも良くみられる双極性障害や、特に増加している境界性パーソナリティー障害や、坑うつ剤の増強作用に使われるリチウム《リーマス》、バルプロ酸《デパケン》、カルバマゼピン《テグレトール》などの気分安定役の標準的な投与量、投与方法、副作用などについて基本的なことをよく勉強しておく必要が私たち一般臨床医にもあるようです。

特に昨今『心の風邪』といわれているうつ病も実は軽症とはいえ「コントロールがなかなか大変で、3〜4年間は丁寧な薬物療法、カウンセリング、必要とされるうつ病の症例も多い」ようでした。兼子先生には、坑てんかん薬の使い方及び妊娠との関連性について、あまり時間はなかったもののざっくりとしたところを教えていただきました。薬物の血中濃度を測りながら、適正な形で薬物の投与量を維持することの重要性を身にしみて感じました。いわゆる臨床精神薬理学的な知識は今後認知症、高齢者のうつ、その他の精神疾患が増えると見込まれる現在、地域医療にたずさわる一般医にとっても重要なことだと思われます。一般医として絶えず注意深く抗不安薬、睡眠薬の使っていく必要があるわけですが、もう少し知識を深めたいという医師には大変役立つ情報でした。この5人の先生方からは、目が離せません!       
(注:《》内は商品名)

引き続いて2006年プライマリ・ケア関連学会連合学術会議が5月13日・14日に開催されました。

同時に開催した第29回日本プライマリ・ケア学会のテーマは『健康で豊かな地域社会作りを目指して』、第21回日本家庭医療学会のテーマは『地域ニーズに対応した家庭医療の展開』です。非常に魅力的な講演シンポジウム発表の中で、生活習慣病や認知症、在宅ターミナルケアをめぐる諸問題が大変興味深く思われました。特に在宅ターミナルケアの問題は、法律的な問題と背中合わせの部分があります。医療に詳しい弁護士がまだまだ多いとはいえない状況ですが、地域医療を弁護士と医師が一緒に問題解決にあたることの必要性を痛感しました。家庭医療学会では生坂政臣先生(千葉大総合診療部教授)グループの上肢痺れの診療・頭痛診療・めまい診療における問診の操作特性の演題が検査機器を持ち込めないことが多い在宅医療の現場に生かせそうだという印象を持ちました。

旧友たちはどんどん偉くなります。室蘭にいた葛西龍樹先生は、福島県立医大地域・家庭医療部教授になられ、地域に貢献する医師の研修の場作りに、室蘭と連動しながら活発な活動を開始されています。葛西先生は、「家庭医療サマー・フォーラムin福島2006」を本年8月19日・20日と開催されるようです。興味のある方は、ホームページをご覧下さい。

実は、ライフケアシステム辻彼南雄先生(在宅医療を推進する医師の会幹事)にも会場の廊下でお会いしました。皆さんご存知のように独特の患者会システムを構築され、患者どうしで教えあうという理想的な医療の需給関係を達成されています。今度水道橋のクリニックにお邪魔する約束を取り付けました。患者どうし教えあうという意味で、NPO「環境汚染等から呼吸器病患者を守る会」通称エパレクは、認定試験に合格した認定熟練患者が(Expert Patients:EP)が受療経験の浅い患者に対し、学習会や相談会などを通じて支援するユニークなシステムを導入しているとのことです(広報部:矢内純子氏)。この動きからも、目が離せませんね!

「セミナーお知らせ」
訪問看護の理論と実践のクィーン・山崎摩耶先生の講演に
是非、おいで下さい!詳細は、「INFO!お知らせブログ」まで。
http://blog.carenet.com/info/entry/2006/04/000955.php

05月22日 | ↑TOP

コメント

投稿者:Funky-U

高瀬先生いつもお世話様です。ブログ楽しく読ませてもらっています。私も「休みの日と夜」ばかり働いています(笑)。先週突然年賀状をいただきまして、びっくり。なんと申しますか、「先生らしいなぁ」と感動いたしました。ご相談の件ではご期待に添えず申し訳ありませんでした。ただ、なんという偶然か今年10月より私も静岡に異動することになりました。今後ともよろしくお願い申し上げます。

06月04日|↑TOP

投稿者:PSW夫婦、秋吉です

先日は年賀状(セミナーのお知らせ)ありがとうございました。残念ながら主人は参加することができなかったのですが、また年賀状を頂ける嬉しいです。息子は年中鼻タレですが大きな病気をすることなく、お蔭様で今月1歳を迎えます。私は今月から江戸川区の保健所デイケアでバイトをすることになりました。高瀬先生のブログを読ませて頂き、もっと勉強しなければならないと痛感しました。バイトは月2回なので身体に無理なく働けそうです。また家族で先生にお会いしたいです。

06月08日|↑TOP

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